共感と励ましの毎日の中で「会えてよかった」と思われるような出会いを見つけてください。
大切にしていることは?と聞かれて、いつも頭に浮かぶのは、誠実という言葉です。その時にいつも自分に問いかけるのは、誠実ってなに?という言葉です。 私は、家業が明星学園をやっているということもあって、この道に入ってはいるんですが、原体験は20代の頃に自閉症の子どもたちと過ごしたボランティア活動にあります。そのグループに10年近く在籍することになるんですが、他に例がない長期間ボランティアで、憑かれたようにそのグループに週一回出かけて行っていました。 それはなぜか?と後に考えたのですが、別れる時の「また、来週ね」という言葉を守んなくっちゃと思い続けていたんですね。普通に考えれば、相手は重度の知的障がいがある方々ですから、約束ってわかっているの?となりますが、信じたいという気持ちが強かった。それに、このグループでの自分は、本当に自分らしい自分でいられたんです。遊んで、これやって、手伝ってって、言葉じゃなくてお願いされるんだけど、それがとっても楽しく嬉しかった。失敗しても、もちろん責められなかったしね。だから2時間、本当に全力で遊んでました。「宮下さんの笑顔、百万ドルだね」って言われていたけど、本当の、こころからの笑顔だったからだと思います。 頼られていることの恩返しっていうのかなあ?信じてくれていることへの恩返しなのか、いつも全力でなくっちゃ、と思っています。
一言って難しいですが…支え合い、かな?支え合い、見えないことばかりだと思うんですよね。 でも、超がつくような強度行動障がいの方々や、言葉のない方々の本当の気持ちとつきあうなんてことが、結果として成し遂げられているのは、支え合っているからとしか思えないですよ。 100点満点の支え合いなんていうものは、世の中にないに決まっているわけですから、明星においても同じことなんだと思いますが、例えば、園長一人のことを考えても、A職員、B職員のことを考えても、限りなく支えられ、支えていると思います。職員間の支え合いもあるし、もっと大きいのは、メンバーさんと職員との支え合いだと思います。メンバーさん方同士の支え合いもあります。 人を支えるのはポジティブメッセージですが、原点のところは、笑顔だったりします。職員から頂ける笑顔、そして、メンバーさんから頂ける笑顔ですね。次に、仲間意識。子育てでも「うちの子ですからかわいいに決まっています」という決め台詞がありますが、だって仲間じゃん、っていう支え合いがあると思うんですね。なんだかワンピースのルフィのようになっちゃいましたね。でも、困難なことに立ち向かっているときって、仲間意識って、相当の力を生み出すって思います。
明星には、重度の知的障がいの方々がとても多いのですが、その方々に対してちゃんと一人前扱いをすることができる、というのが大きな特長だと思います。 昔、他の事業所の方と話していて、内容はずっとメンバーさんのことだったんですが、その方はずっと職員の話をしていると勘違いをされており、「今のは利用者さんの話だったんですか?」と言われたことがあるんです。職員が、重度の障がいの方々をきちんと一人前に見ているからこそのエピソードだと思っています。 あとは、なんといっても我慢強さかな。しぶといと思いますよ。ありがたいことだと思っています。 どんな人に来て欲しいかって、知的障がいの方に対して、昨日よりも今日、少しでも仲良くなりたいと思う人ということになります。ぎこちなくても、ゆっくりしたペースでもいいので、なんか人の役に立ちたいなあとか、新しい発見で感動したいなあとか、せっかくの人生成長したいなあとか、自分の力を試してみたいとか。そんな方々と一緒に働きたいと思います。
私たちの仕事は、いつも彼らの人生の物語とそれぞれの職員の人生の物語の交差点で、生じています。だから、人とかかわる仕事は、好むと好まざると、相手の方の人生に足跡を残すことになります。どうせ残すなら「この人に会えてよかった」と思われるような出会いをしたいと思います。海図も無く、羅針盤もない、そんな古代の航海に似た障がい者支援の道ですが、「みんな幸せになりたい」を旗頭に、共感と励ましの毎日を仲間とともに歩んでいきましょう。
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PROFILE
明星学園 / 第二明星学園 園長
宮下 智
昭和30年生まれ。昭和60-61年 明星保育園副園長、62年に明星学園施設長となる。 平成16年に長野県知的障がい福祉協会会長、17年に明星学園・第二明星学園総園長となり、26年より社会福祉法人明星会理事長を務める。ほか多数の委員・アドバイザーとして従事。